Tektronix 2782(Repair Ver2)
Tektronix 2782 スペクトラムアナライザ 100Hz〜33GHz
の修理その2
2018年3月
突然Tek2782の画面にスイープが出なくなった。
回りの枠は表示されてスイープ波形だけ出ない。
さて困った。
休みの日、朝電源を入れると、SAMPLEの設定で波形が出た。MAX、MIN、MINMAXでは出ない。
どうやらVIDEOボードが壊れたみたい。
SAMPLEだけ動作するなら、それで使うかなぁ・・・。と思っていたら、SAMPLEでも出なくなった。おや〜。。。
VIDEOボードを調査開始したが・・・
2018年4月なってしまった。
あちらこちらのICの足の接続を調べている。
どうやら、垂直のY軸はADコンバータで波形をディジタル化しているが、水平のX軸はディジタル化するのにADコンバータではなくDAコンバータを使っている。
カウンタ回路が有り、カウント値をDAコンバータにいれて、そのアナログ出力をスイープのX軸方向の電圧入力と比較して、カウンタのアップ、ダウンを切り替えている。
アップとダウンにヒステリシスを付けることで、アナログのノイズ除去しているのかなぁ。カウンタの値がADコンバート結果となって、Y軸データを格納するRAMアドレスになるとマニュアルに書いてあった。RAMアドレスがノイズで増減しては困るだろうから、ノイズ除去して一方向に進める(カウントアップ)ためかな。
SAMPLEが動作するので挙動をロジックアナライザで観測しながら、スイープ速度を切り替えてみた。するとスイープを早くすると、波形が途中からしか出ない現象が発生した。ロジックアナライザでカウンターのカウントをみると、スイープ開始でカウンタの値をカウントダウンしている。その後、入力のスイープ電圧と一致したところで、カウントアップが始まる。そこからY軸データの格納が始まるので、頭が切れて途中から波形がでてくることが分かった。では、スイープを遅くするとどうなるのか、やっぱり同様にカウントダウンしているが、スイープが遅いので、頭切れがほとんど分からないだけであった。
カウンタ回路を調べると、クリアというかデータロードで0(全てのビットがLレベル)をロードするようになっている。だが、ロード動作はしていない、これがおかしいのではないだろうか?
取り敢えず、応急的にカウントMAX信号とスイープのスタート信号でロード信号を作り、カウンタICのロードPINを浮かせて、ワイヤーで配線してみた。
が、SAMPLE動作の頭切れは無くなったが、MAX、MIN、MINMAXは依然として動かない。まだどこかロジックにおかしな部分があると思える。
ある日、SAMPLEでも動作しなくなった。4月になり暖かくなってきたせか?
では、と基板を冷蔵庫で冷やしてみた。するとSAMPLEの波形が出た。やっぱり。じきに動作しなくなったので、温度が関係しているのは間違いない。と言っても手立てはないが・・・(ヤレヤレ)。
いろいろ接続を調べて回路図がそこそこ出来て来た。ある怪しい部分にロジックアナライザを繋いで見てみると、なんだか動作がおかしい。トライステート出力を74HCT175でラッチするところだが、クロックのタイミングではトライステート出力は確定して出てるのだが、それまではフローティング状態になっている。そのせいか内部のラッチがラッチアップしているようで、入力に無関係に出力がでたままで変化しない。試しにプルダウン抵抗を付けるとSAMPLEが動作するようになった。なんじゃこれは。じゃあいままでどうして動作していたのだろうか??。ICを新品に交換してみようと、いつもの(ツ)さんに手配した。1Wほど待たねば。
2018年5月
連休は手が出ず。連休あけて作業再開である。
上に掲載した写真にあるように、PLCCの四角いICがるが、大きいのがFPGAもどきで小さいのがPLDである。大きい方は外部のEEPROMからデータをロードするタイプで小さいのは固定ロジックだが中身は4つとも違う。ただこれは入力ピンと出力ピンがはっきり分かれているので、出力の信号の行き先で何の信号かは想像できる。この中の一つPLDの出力から、カウンタのロードに繋がっているので、このPLDの入力からカウンタロード信号を作り出せばよいはずである。
PLDの入力信号にロジックアナライザをつないでいろんなタイミングの動作波形を多数取得した。
さて、これらの信号の組み合わせでロード信号を作るのだが、ちょうど良さそうな信号あることが分かった。
ところがどっこい、一難去らずにまた一難である。
電源がまったく起動しなくなった。(ヤレヤレ)
VIDEOボードの修理は中断である。
早速電源をばらした。白い線は前回この基板がレヤーショートしたときにジャンパしたものである。
一次側の125Vの電圧が出ていない。こんどこそFETが飛んだと思って、前回買ったFETと交換してみたが、だめであった。外したFETもチェッカーで正常だった。
こんどは電源回路の解析である。
またも回路図を起こして解析したがなかなか原因が分からない。修理をあきらめて個別に電源を寄せ集めて作ろうかとも思ったが、もうひと頑張りしようとオシロで波形を採って見た。
うーーん。よくわからん。
回路電圧を調べてどうやらチョークコイルがおかしいのではと考えて外してみた。
インダクタンスを測るとほとんど0である。こ・壊れている。レヤーショートしているようだ。何故??
ちなみに下に敷いてある英語の紙はスイッチング電源ICのデータシートだ。
このICでFETを駆動してDC125Vを作り出している。
100V電源→倍電圧整流DC280V→スイッチング電源→DC125Vである。
大ざっぱにはこんな回路である。
同じものは手に入るはずもなく、巻き直すしかないと覚悟を決めた。
早速分解しようとしたが、コアがボビンから外れない。ニスで固めてある。無理に剥がそうとしたらコアが割れてしまった。(あちゃ〜)
悩んでもしょうがない。気を取り直して線を巻き替えた。コアは接着剤(アロンアルファ)で貼り付けた。
そもそも磁気飽和を防ぐため隙間をあけておくくらいだから接着剤で貼っても隙間の誤差範囲だろう、等と我田引水的な発想だ。
さて、出来たコイルを元通り組み込んで、電源投入・・・・・なおっ・・・・・・てない。おや〜・・・
さらに悩む・・・。
2018年6月になってしまった。
なんとなくトランスもおかしいのではと思い始めた。
取り敢えずトランスを外して1次コイルのインダクタンスを測った。外さなくても測れるのだが、巻き直す気むんむんだ。
インダクタンスは2mHでプッシュプルの2回路ともそろっている。が・・・・・これがいいのかどうか分からない。
1次コイルに高周波100kHzを入れて2次の出力を見たが、そもそもトランスの仕様が分からないので判断できない。
このままでは、何も進まないので、意を決して巻き直すことに決定。
分解を始めたが、やっぱりコアが割れてしまった。ヤレヤレ
こんな感じで割れたが、巻きやすくて良いかも・・・。
見えてる巻き線は1次のフィードバック用だ。
これが1次巻き線
1次を巻き直したところ。層間絶縁にポリエステルテープを急遽モノタロウから取り寄せた。
2次コイルは元巻いてあった線を再使用した。
1次コイルのインダクタンスを測ったら4mHであった。やっぱりいかれてたのかな・・・。
さて組み上げて通電、こんどこそ直ったにちが・・・・・、直って無い! がくっ!
ええ〜、そ・そんな〜
またもや悩む・・・・
ネットでスイッチング電源回路について勉強した。便利な時代になったものだ。
さて、我がスペアナの電源だが、プッシュプル回路になっている。フライバック方式ではないようだ。ネットにはプッシュプル回路は少ない。
回路をながめていて何気にスナバ回路のダイオードが飛んでいるのかと思い、外してチェックしたが問題ない。
回路をテスタで導通をはかると、な・なんとGNDとの間の抵抗値が2オーム程しかない。おや〜、スナバ回路だからGNDに2オームで接続なんて絶対にありえない。
以前の故障と同じようにパターンがレヤーショートしているぞ。
回路図で書くとこんな感じだ。ちょっと見にくくなったが赤で書いた抵抗が接続されたような感じだ。
DC125Vをこの抵抗(レヤーショート)で短絡しているようなものだ。だからコイルが焼けたのかー。納得。
パターンをカットしてスナバ回路をワイヤーで配線したところ、
復活!!
めでたしめでたし。
さあ、電源が直ったので、引き続きスイープが出ない不具合対策へリターンだ。
VIDEOボードへ復帰して、さてどうしたものか、考えたが。
取り敢えず(ツ)さんから取り寄せた74HCT175を交換してみたが、直らない。SAMPLEも出なくなった。なので再びプルダウン抵抗を付けた(なんだかなぁ)。
やっぱり、カウンタICのロード信号のタイミングしかないな。そもそもロード信号はPLDから出力されるはずが出てこないので、無理やり作ってみたのだが、このPLDの入力信号から作っているはずである。このPLDはPLS173で、入力ピンと出力ピンが固定である。なので入力信号がどれかは分るので、信号を全てロジックアナライザで波形を採った。
そこからロード信号になりそうな信号を拾い出し、ANDかORすれば作れるはずである。
採った信号からそれらしい信号をANDすれば良いのではと思いつき、すでに追加で作っていた回路を修正した。
こんな感じである。
フラット型の74LS00を付けている。
さて、どうだ・・・・。
なおっ・・・・・・・・た。万歳!!
さて、なおったぞ〜とばかりに、いろいろな波形をテストしていると・・・・・・。
おや〜(こればっか)
スイープが止まるぞぉ
広域をスイープするとハーモニック次数の切り替わるようなスイープとなるが、このときスイープが止まってしまう。
それもタイミングによるようで、しばらく動作する場合もあるが、直ぐに止まる場合もある。
はて、ロード信号のタイミングが悪いのかなぁ。改造したのはそこだから。でも記憶のかなたにその現象を見たような・・・・・。
いずれにせよ、一難去ってまた一難だ!
VIDEOボードのクリアのタイミングがまずかったのかなぁ。PLDの他の入力信号とANDを取ってみたが全てうまくいかない。かえって動作しなくなる。
SWEEP時間を手動で長くすると発生しなくなる。う〜〜ん分からん。
DAコンバータを使ったAD変換のカウンタが停止するのかぁ?ってことで調べたが、カウンタが停止するわけでもない。ということはアナログのスイープ電圧(RAMP出力)も停止している訳でもなさそうだ。
画面をふとみると、ディジタルストレージが途中で止まったような感じだ。スイープのカウンタは止まっていないのを確認したので、その取り込みが止まったようだ。
ディジタルストレージ基板をみるとCPUが80186だ。懐かしい。しかもジャンパが多数。もしかして、途中で止まる対策をやったのかと勘ぐってしまう。
さらによく観察すると、止まる位置で一瞬息継ぎするような動作をしている。何かの割り込み処理でもしているのだろうか。しばらくは動作するが、割り込みタイミングで割り込み処理から戻ったら、カウンタが行き過ぎていて、そのまま止まってしまうのではないだろうか。
では、と言うことで、スイープを伸ばすために、RAMP生成のコンデンサに追加でコンデンサをパラにしてみた。すると息継ぎの場所が移動して、止まる位置も変わった。
SWEEP時間を手動で長くすると現象が発生しなくなるとこから、もっと長くしてみよう。
現状付いているコンデンサはフィルムタイプで0.082μFとなっている。念のため外して容量を確認するとピッタリ(誤差範囲で)合っている。容量抜けではなさそうだ。容量抜けならコンデンサ交換と思ったが、そうでないなら追加するしかない。そこで0.1μFをパラにしてみた。
するとSWEEPのほとんど終わりの部分で息継ぎをして、そこで止まる。それではと、さらに0.033μFを追加たところ息継ぎがなくなった。これはいけるかもしれない。
しばらく動作させたが止まらない。色んなパターンを試したが、止まらなくなった。
これでよい?確かにSWEEP時間は2.6倍にのびたが、それはこのコンデンサを使うところだけである。SWEEP時間で20ms〜1sが2.6倍になった。でも画面をみて20msが2.6倍になったどうか分からない。
これで良しとしよう。
コンデンサ追加の写真
黄色い大きいコンデンサはフィルムコンデンサの50μFだ。1s以上の時間はこちらを使っているようだ。
以上で一件落着。
追記
でも、よく考えたら変だ。スイープを遅くしたのだから、割り込みなら回数が増えるはずである。割り込む位置はスタート側へズレなければならい・・・。はて?
1回目のコンデンサ追加で確かに後ろへズレたのだが。割り込みでないとすると何だろう??
うまく動作しているから、まぁいいっか!(出た、いい加減が・・・)
つづく つづかない(で欲しい)