TS-820S レストア


TS-820Sを昔(約20年前)友人から入手して登録してあったが、しばらく押入れに保管状態だった。友人が所有時に落としたとかでパネルが変形し、別の個体と交換したとかで、パネルはTS-820Xになっているが、ファイナルは6146Bが2本の100W出力である。ツマミも1個無い状態だった。

今回、登録機種の延命(平成34以降も使用できる。平成は令和になったので令和4年以降だが)処置をするためJARDで申請をした。この中にTS-820Sが入っているので、押入れから出して使えるようにしようと考えたのである。


では、早速取り掛かろう。

まずは、パネルやツマミの洗浄からだ。(ちょっとピンボケ)
お皿の左上の黒いツマミは、ツマミの無かったところに付けていた社外品の適当な物。20前だったのでオクも無かったから。
これを機会にオクで純正のツマミを購入予定。



IF基板も洗浄中。CWフィルタも無いので、これもオクで物色中。



VFOを外して動作チェック中。回転させると発振が不安定。よくあるやつだ。
バリコンシャフトの後ろに入っている板バネの接触不良である。接点洗浄剤を付けて、ぐるぐる回転させてみたが、いま一つである。バネが弱っているようである。ラジオペンチでバネを変形させて強く当たるようにしたところ、安定して動作するようになった。
その後トラジスタも交換した。例の2SC460Bを交換した。動作してはいるのだが、今後を考えて交換した。


キャリアユニットのトランジスタ(2SC460B)を交換。


VCOユニット

トランジスタを交換。


ディジタル表示器用5Vレギュレータの電圧ドロップ用抵抗器にヒートシンクが付いている。そこのグリスが干上がっていたので、一旦外して固まったグリスを取り除き、新たに塗りなおした。


カウンタの表示が時々ちらつくので、分解して調査。
周波数変換部の2SC460Bを交換した。


すでに黒いジャンパしている所があやしい。再半田することで取り敢えず直った。

上蓋、底蓋に錆が出ていたので再塗装。


交換したトランジスタは
・2SC460B → 2SC1047
・3SK35  → 3SK101

組み立てて調整した。
調整したと簡単に書いてしまったが、サービスマニュアル通りに順に調整する。

キャリア漏れとか、中和の調整はダイオードで作った簡易RFプローブを使うようになっているが、面倒なのでスペアナへ信号を入れてレベルを見ながら調整した。
SSGから-140dBmの信号を入れても確認できるのでそこそこ感度は良い。

ツマミも入手して交換、CWフィルタも入手して入れた。

3SK35と3SK101の違い。

これが3SK35(RFもIFも3SK35)



これが3SK101.ノイズレベルが下がってフィルタの形状がわかるようになった。これはIFの3SK35を交換した効果が大きい(?)。



IFのAGCの調整を完了してSメータの特性を測った。
青が理論値、赤が実測値。まずますの出来かな。

    メモリ[左:Sの読み  下:SSG出力dBμ(EMF)] 14.175MHzで測定



しばらくワッチしてみた。ちょっとノイズっぽい、IFの入力を入れなくても出るので、IFで発生しているようだ、上のオーディオスペアナのように3SK35の時よりはよくなっているが、気にするせいか、ノイズが気になる。オーディオ出力にCRのローパスフィルタを入れてみた。結果そこそこましになった。
弱い信号を聞くと、なぜかノイズの隙間から信号が浮き上がるように聞こえる。
たとえが悪いので分かっていただけるか・・・、草をノイズとする。その草のかげに動物が隠れている。例えばウサギとか。TS-820Sのノイズである草は隙間が大きく草の隙間からウサギの存在が分かる。他の機器は草の隙間が少なくウサギらしき存在は分かるがウサギであることが分かりにくい。草の高さはどちらも同じだ。
つまり、ノイズのピークが同じなのだが、TS-820Sではノイズの間から信号が出てくる感じ、他の機器はノイズの陰に信号がある感じである。

あと、VFOのドリフトは意外に気にならない。数時間で200Hzくらい低い方にズレるが、そんな長話はしないので問題無い。


ああ、そうだ。TS-820でネットを検索すると、ダイアルがずれているので分解して取り付け直したと書いているのや、YouTubeでネジを外して付け直しているのを見たのだが。
そもそもアナログVFOのギアダイアル式のもは、メモリ合わせは分解しなくても良いようになっている。自分のようなTS-520発売前から無線やっている人には常識のようなことだが、知らない人も多いのだろう。
では、どうやってダイアルのずれを調整するのか。機種によって微妙に異なるが基本は同じだ。いわはアナログ時計の分針を合わせるようなものだ。アナログ時計の分がずれているといって分解はしないのと同じである。時計のギヤの部分と分針は摩擦で伝達してあり、その部分をずらすことで位置関係を合わせるのである。
TS-820Sの場合は以下の写真のダイアルの根元のギザギザの部分を片手で回らないように抑えて、チューニングダイアルをもう片方の手で強制的に回すことで摩擦で結合している部分をずらして位置関係を変え、ダイアルとバリコンの関係をずらすのである。
ただし、メモリのズレる方向とダイアルを強制的に回す方向が逆なので最初は戸惑うかもしれないが2〜3度繰り返すとコツが分かってくる。
マーカーを発信させてゼロビートを取りながら合わせると良いので、みなさんぜひやってみて習得して欲しい。
本当はダイアルを固定してギザギザのメモリ側を動かすのだけど、やりづらいので逆でやってみた。(自分だけかも)
皆さんはやりやすい方でどうぞ。(マニュアルにはギザギザ側を動かすと説明してある。)



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